企業価値向上のための“攻め”のサステナビリティ経営「Booostカンファレンス」開催レポート② 基調講演(1)BCG半谷氏&実務セッション
目次
トランジション期における 変革と投資の最前線

トランジション期において、経営変革をどう進めるべきか?
登壇者

ボストン コンサルティング グループ (BCG)
マネージング・ディレクター & シニア・パートナー気候変動・サステナビリティグループ 日本リーダー
半谷 陽一 氏
三菱重工業株式会社を経て2015年にBCGに入社。BCG気候変動・サステナビリティグループの日本リーダー 、および産業財・自動車グループ、コーポレートファイナンス&ストラテジーグループのコアメンバー。中長期戦略策定と実行、事業プロセスと組織設計、営業改革、事業分割や企業合弁および新会社の事業計画策定と立上げなどのプロジェクトを手掛けている。
はじめに:サステナビリティを「経営戦略」として再定義する

講演の冒頭、半谷氏はこれまでの経験を踏まえ、サステナビリティを「コスト」ではなく、企業価値を高めるための経営戦略として再定義する必要性を説きました。今やサステナビリティは“理念”ではなく、“経営の中核”にあります。
変化が激しく不確実な時代においては、リスクを抑えるだけでなく、新たな機会をどう捉えるかが企業の競争優位を左右します。半谷氏は、こうした時代を生き抜くうえでの指針として、サステナビリティ経営を「変化に強い企業をつくるための経営」と位置づけ、経営そのものを再構築する視点の重要性を提示しました。
グローバル経済の地殻変動と「逃げられないリスク」

世界は今、かつてないスピードで変化しています。地政学、サプライチェーン、エネルギー、消費者の価値観——全てが企業経営に影響を与えています。
半谷氏はこの状況を「逃げられないリスク」と表現し、変化の構造を次の4つの要素に整理しました。
①グローバル経済の変動
②顧客・産業構造のハイテク化
③サプライチェーンリスクの増大
④新たな社会課題の台頭
トランジション期の経営では、これらの変数を単なる“環境要因”ではなく、“経営戦略と株価を左右する要素”として捉えることが求められています。「もはや企業はリスクから逃げられない。経営の多様性を高め、意思決定のスピードと精度を上げることが、生き残りと成長の条件です」と半谷氏はこのテーマをまとめました。
“見える化”から“意思決定”へ──経営に求められる新たな能力

環境変化の中で、企業に求められているのは「見える化」だけではありません。「データを取るだけでは不十分です。その先にどう意思決定を下すかが問われています」と半谷氏は語ります。
過剰供給や物流の分断、関税変更など、環境が月単位で動く時代においては、経営の中枢にインテリジェンスを置くことが欠かせません。そのためにも社内外のデータを集約し、サプライチェーン、販売先、顧客動向をリアルタイムで可視化しながら、経営判断に直結させる体制を整えることが重要です。
「守りながら攻めるためには、こうしたデータ駆動型の意思決定が、企業価値の源泉になります」と半谷氏は解説しました。
守りと攻めの両輪──エコシステムを再設計せよ

経営変革を進めるうえで重要なのは、「守り」と「攻め」の両輪をいかに回すかです。守りでは、リスクの特定と集中管理、そしてナレッジチームの設置が欠かせません。一方、攻めでは、サプライチェーン再編や新規投資を“共創の視点”で捉えることがカギになります。
「世界最大級の総合化学メーカーが、ライン川の干上がりが原因で物流を止めざるを得なかったように、リスクは現実に起こります。守るだけでは、次の成長はつくれません」と半谷氏は警鐘を鳴らします。
また、サプライチェーン変革を阻む要因として、半谷氏は次の3点を指摘します。
①戦略の不足:地域差を踏まえたシナリオプランニングの欠如
②ケイパビリティの不足:判断と実行を支える人材・組織能力の不足
③エコシステムの構築不足:リスクを分担・補完する枠組みの欠如
これらを克服するためには、「コーポレートが事業部を支える体制」への転換が不可欠です。データを集め、可視化し、意思決定につなげる。そのプロセスを通じて、リスクを恐れず「攻めのガバナンス」へ踏み出すことが求められています。それは単なるリスク対応ではなく、株主価値と企業ブランドをともに高めるための経営戦略でもあるのです。
また、「これらの変革は株価にも直結します。経営層が統合的に判断し、サプライチェーン全体でリスクを管理できるかが試されています」と半谷氏は語ります。
サステナビリティ、ダイバーシティ、デジタル化――これらはもはや個別の課題ではなく、経営の中核で統合的に扱うべきテーマです。現場と経営をつなぐ“統合経営”こそが、変化を力に変えるカギとなります。
「逃げずに動くこと」。それこそが、トランジション期を生き抜く企業に共通する唯一の答えだと半谷氏は結びました。
攻めの”サステナビリティ経営”を支える「booost Sustainability」

Booost株式会社
代表取締役
青井 宏憲
2010年よりコンサルティングファームで、スマートエネルギービジネス領域を管掌し、スマートエネルギー全般のコンサルティング経験が豊富。2010年よりこの業界で知見を積み、創エネ、省エネ、エネルギーマネジメントに精通。2015年4月、Booost株式会社を設立。Sustainability ERPをローンチし、時価総額5,000億以上のエンタープライズ上場企業を中心に、92ヶ国以上、約2,000社192,000拠点以上(2025年2月時点)の導入を推進。サステナビリティ関連財務情報開示全般の深い知見を持つ。Green×Digital Consortium運営委員。
攻めのサステナビリティ 経営3.0” 開示改革から経営OSの再構築へ

Booost社 代表取締役の青井宏憲が登壇し、「攻めのサステナビリティ 経営3.0」をテーマに、サステナビリティを“コスト”ではなく“企業価値を高める経営戦略”として実装する新たなアプローチを紹介しました。
青井は冒頭、「投資家が求める情報開示と企業の実態の間には、依然として大きなギャップがある」と指摘。企業の約半数が「十分に開示している」と回答する一方、投資家側ではそのうちわずか1%しか「十分」と評価していないというデータを示し、この乖離が市場の信頼低下や資本コストの上昇につながっていると述べました。
東京証券取引所が「PBR1倍割れ問題」への対応を上場企業へ求めるなか、サステナビリティはもはやCSRの延長線上ではなく、経営のOSそのものをアップデートする局面に入っていると話を続けます。
財務的影響を“見える化”することが投資家との信頼をつくる

サステナブル投資残高はすでに運用資産全体の約63%に達しており、ESG情報は企業価値や株価に10〜15%程度寄与していると言います。
それにもかかわらず、多くの企業では“戦略なきミニマム対応”が続いており、「グローバル企業との差はますます拡大している」と警鐘を鳴らしました。Booost社の試算によると、時価総額1兆円規模の企業であれば、開示姿勢の差によって最大13%(約1300億円)もの時価総額ギャップが生じる可能性があるそうです。
実際、東京証券取引所のプライム市場では、非財務情報を投資家目線で十分に開示している企業群が平均で約50%の株価上昇を示す一方、未対応の企業は14%にとどまっています。さらに同証券取引所のスタンダード市場では、その差はおよそ70ポイントにまで広がっていると指摘しました。
「今後は、財務と非財務を統合し、リスクを定量的に説明できる企業こそが“中長期の稼ぐ力”を示せる」と語ります。
サステナビリティ経営の壁とBooostのアプローチ
青井は、サステナビリティ経営の実装を阻む最大の壁として「財務的影響算定の難しさ」を挙げました。サステナビリティ推進部門と経理・会計部門の連携、ナレッジ・人材の不足により、法定開示レベルの財務インパクトを自社で算出できない企業が多いと言います。その多くはExcelや外部専門家に依存しており、開示の一貫性や再現性の確保が課題として挙げられます。
こうした状況に対し、Booost社は財務・非財務情報を統合する経営基盤「booost Sustainability(ブースト サステナビリティ)」を開発しました。基幹業務全域をカバーする「Sustainability ERP機能群」を備え、バリューチェーン全体のリスクと機会を一元管理できる仕組みを提供しています。
今回発表された新機能「booost Impact(ブースト インパクト)」は、財務的影響の算定と開示を一気通貫で支援する機能です。リスク・機会の管理基盤、財務的影響算定エンジン、そしてガバナンスを効かせたデータ連携機能を搭載し、算定から開示までのプロセスを統合的に支援します。また、人的資本や社会資本など、気候変動以外のテーマにも拡張でき、将来的にはCSRDで求められるダブルマテリアリティ対応も視野に入れています。
プロダクトサイト:https://booost-tech.com/
データドリブンな経営判断から、“攻めの開示”へ

Booost社の顧客のなかには、Tier1〜Tier4までのバリューチェーン全体のデータを「booost Sustainability」で管理し、調達構造の変更時に財務影響をシミュレーションしている企業もあると言います。青井は「“開示のための開示”を超え、経営判断に資する基盤を整えることが重要です」と語った上で、サステナビリティを“コスト”から“投資・経営判断”へ変える取り組みを強調しました。
さらに、社内外での納得感を伴った取り組みの加速こそが企業価値向上につながるとし、「booost Sustainability」を「実行を支え、経営インパクトを可視化する基盤」と位置づけました。Booost社は今後も、経営とサステナビリティを一体化し、企業価値の創出を支援する“攻めの開示”の実現を目指しています。
アーカイブ動画
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オープニング - 08:36~
機関投資家と探る“攻めのサステナビリティ経営” - 40:33~
トランジション期において、経営変革をどう進めるべきか? - 1:11:14~
“攻めのサステナビリティ経営”を支える「booost Sustainability」 - 1:26:33~
トランジション期における変革と投資の最前線」 - 1:55:45~
“攻め”のサステナビリティと企業価値
